この記事で取り上げるトピック:
- ドライバー
- 特定のRenderer構成での入力/出力デバイスの設定
- 特定のRenderer構成での同期の設定
- マスターファイルとハードウェアのフレームレートの設定 - WindowsベースのMADI
- サンプルレートの設定
- 96kHzでの作業
- 処理
- 空間コーディングのエミュレーション
- 出力制限
- スピーカーの処理
- ヘッドフォンの処理
- リレンダリングの処理
- ヘッドフォンの処理
はじめに
Dolby Atmos Rendererは、Rendering and Mastering Workstation (RMW) 上で動作する場合は外部ハードウェアと連携するよう設定し、DAWと同じCPU上で動作する場合はDolby Audio Bridgeと連携するように設定する必要があります。また、ご希望のワークフローやモニター環境に合わせるために、追加の設定も必要です。
Rendererの起動
使用するオペレーティングシステムに合わせて、次の場所からRendererを起動します。
- Windows – C:\Program Files\Dolby\Dolby Atmos Renderer\ rendererApp.exe
- Mac – Applications/Dolby/Dolby Atmos Renderer/Dolby Atmos Renderer
環境設定と設定へのアクセス
Renderの「Settings/Preferences(設定/環境設定)」ページへは、以下の場所からアクセスします。
- Windows – メニューバー – File/Settings
- Mac – メニューバー – Dolby Atmos Renderer/Preferences
「Preferences and Settings(環境設定および設定)」のページでは、左側にいくつかのタブが表示されます。
「Driver(ドライバー)」タブ
「Driver」タブでは、利用可能なI/Oハードウェアとソフトウェアの主な設定を行います。使用する構成に応じて設定してください。
WindowsベースのMADIシステムでは、以下のように設定します。
- オーディオドライバー:ASIO
- オーディオ入力デバイス:ASIO Hammerfall DSP
- オーディオ出力デバイス:ASIO Hammerfall DSP
- 外部同期ソース:ASIO Sync
WindowsベースのDanteシステムでは、以下のように設定します。
- オーディオドライバー:ASIO
- オーディオ入力デバイス:ASIO Focusrite Rednet PCIe
- オーディオ出力デバイス:ASIO Focusrite Rednet PCIe
- 外部同期ソース:LTC over audio
- LTC入力チャンネル:128
MacベースのMADIシステムでは、以下のように設定します。
- オーディオドライバー:Core Audio
- オーディオ入力デバイス:RME MADIface XT
- オーディオ出力デバイス:RME MADIface XT
- 外部同期ソース:LTC over audio
- LTC入力チャンネル:128 over MADI または 129 via Analog Mic/Line Input
MacベースのDanteシステムでは、以下のように設定します。
- オーディオドライバー:Core Audio
- オーディオ入力デバイス:Focusrite Rednet PCIe
- オーディオ出力デバイス:Focusrite Rednet PCIe
- 外部同期ソース:LTC over audio
- LTC入力チャンネル:128
Core Audioを使って内部でRendererを実行しているMacでは、以下のように設定します。
- オーディオドライバー:Core Audio
- オーディオ入力デバイス:Dolby Audio Bridge
- オーディオ出力デバイス:Core Audio Interface (該当する場合)
- 外部同期ソース:LTC over audio
- LTC入力チャンネル:129
オプションとして、MIDI Time Code (MTC) を使用することも可能です。しかし、特にパンチイン作業では、MTCよりもLongitudinal Time Code (LTC) が推奨されています。
Pro ToolsのSend/Returnプラグインを使って内部でRendererを実行しているMacでは、以下のように設定します。
- オーディオドライバー:Send/Returnプラグイン
- オーディオ入力デバイス:該当なし
- オーディオ出力デバイス:該当なし(モニタリングはPro Tools経由)
- 外部同期ソース:Sync/Return Sync
ヘッドフォンのみ(Headphone only)モード:ヘッドフォンのみ(Headphone only)モードを有効にすると、このモードが優先されてスピーカーやヘッドフォンの出力などの設定が無効になります。ヘッドフォンのみモードのルーティングも同様に、既存のルーティングよりも優先されます。デフォルトの設定はオフで、1L & 2R にルーティングされます。
フレームレート:新しいマスターファイルを作成する前にフレームレートが設定されます。マスターファイルが開いている場合は、表示が灰色になります。選択肢として、23.976fps、24fps、25fps、29.97fps、29.97fps DF、30fpsがあります。音楽のワークフローでは、24fps を使用してください。
注意:WindowsベースのMADIシステムでは、「Hammerfall DSP Settings」のコントロールパネル(タスクバー上の非表示アイコンから開く)を使って、フレームレートをTCOカードでも設定する必要があります。LTCをチェイスするためには、新規マスターファイルと開いているマスターファイルの両方で、フレームレートがRendererの設定と一致している必要があります。
サンプルレート: 48kHzまたは96kHz
96kHzで作業する場合の注意点:
- 96kHzのマスターファイルはアーカイブ専用で、Dolby Atmos Conversion Toolを使って48kHzに変換しないとエンコードには使えません。
- 96kHzのマスターファイルは、Dolby Atmos RendererからADM BWFにエクスポートできません。
- DAWのバッファサイズは2048である必要があります。
- マスタークロックは96kHzに設定してください。
WindowsベースのMADIシステムでは、96kHzで作業する場合に、追加の手順を踏む必要があります。
- RME Hammerfall DSP Settings コントロールパネル:
- TCOタブ:サンプルレートを「from App」と適切なフレームレートに設定します。
- カードあたり64のチャンネルを維持するには48kフレームを使用します。
- 「MADI 1」タブ + 「MADI 2」タブ:サンプルレートを96kHz に設定し バッファサイズを1024に設定します。
- サンプルレートを変更するには、バッファを1024に設定する必要があります。
- サンプルレートのドロップダウンがアクティブになり、96kHzに変更されると、バッファサイズは自動的に2048に設定されます。
- バッファを1024にリセットします。
- 2枚目のMADIカード用に、2番目のMADIタブで同じ操作を繰り返します。
- Dolby Atmos Mastering Suiteでライセンス付与済みの、適切に設定されたRMWでは、96kHzで96個のトラックの録音・再生が可能です。Dell 7910などの古いWindowsベースのハードウェアでは、96kHzで最大64個のトラックが上限となります。推奨トラック数を超える場合は注意が必要です。トラック数が多いうえ、Object Audio Metadata(オブジェクトオーディオメタデータ)が非常にアクティブな場合には、エラーが発生する場合があります。このような場合、ログには期限切れエラーとして表示されます。
「Processing(処理)」タブ
空間コーディングのエミュレーション – オン/オフを切り替えて、エンコーディング中に行われる空間コーディングの効果を試聴します。デフォルト設定はオンです。
エレメント数 – 空間コーディングのエミュレーションに使用するエレメント数を12、14、16に設定します。デフォルト設定のエレメント数は14です。
出力制限 – ソフトクリップリミッターは、有効にするとスピーカー出力、ヘッドフォン(ステレオ)、再レンダリングに適用されます。またこれは、エンコード時に適用されるリミッターを模倣しています。デフォルト設定はオンです。
「Speaker(スピーカー)」タブ
スピーカー処理 – モニタリング用のスピーカーをオン/オフにするために使用します。ヘッドフォンでモニタリングする場合はオフにしてください。「Headphone only」(ヘッドフォンのみ)のモードではスピーカーがオフになりますが、ヘッドフォンモニタリングを有効にしてもスピーカーはオフになりません。
ベースマネジメント(低音管理) - スピーカーモードは、通常のベースマネージメントとして機能し、レンダリング後にスピーカーフィードから低周波をリダイレクトします。オブジェクトモードは、レンダリング前に閾値以下の低周波を抽出します。すでにベースマネジメントを備えたモニターコントロールシステムを使用している場合は、「Frequency(周波数)」メニューのドロップダウンで必ずこの設定をオフにしてください。
「Headphone」タブ
ヘッドフォン処理 – モニタリング用にヘッドフォンをオン/オフする際に使用します。スピーカーでモニタリングしている間もこれをオンにしておくことはできますが、CPU負荷が高くなります。
注意:特にマスタリング時には、未使用の処理はオフにしておくことをお勧めします。
「Headphone only(ヘッドフォンのみ)」モードは、スピーカーとヘッドフォンの処理モードを上書きし、通常のヘッドフォン処理で有効なルーティングは使用しません。
レンダリングモード - ステレオでは「Trim and Downmix Controls」ウィンドウで選択されたステレオのダウンミックスモードを使用します。バイノーラルではBinaural Rendererが採用され、「Binaural Render Mode」ウィンドウの設定が使用されます。
「Re-renders(再レンダリング)」タブ
再レンダリング処理 – 「Re-renders」ウィンドウで定義されたリアルタイムの再レンダリングをオン/オフにします。CPU負荷を軽減するためにも使用していないときは無効にしてください。再レンダリング処理が無効になっている場合でも、非リアルタイムの再レンダリングは利用可能です。
「Loudness(ラウドネス)」タブ
ラウドネス測定 – Rendererウィンドウでリアルタイムのラウドネス測定をオン/オフにするために使用します。入力信号のラウドネスを測定するには、外部同期(チェイス)を稼働する必要があります。リアルタイムのラウドネスが使用されていない場合でも、開いているマスターファイルのラウドネス分析は可能です。
「Network Information(ネットワーク情報)」タブ
ネットワーク情報 – Rendererとの通信に利用できるワークステーションのIPアドレスを表示します。これらアドレスはDAWやRemote Rendererアプリケーションで使用されます。