この記事で取り上げるトピック:
- はじめに
- プロジェクト設定
- Dolby Atmos Music Pannerプラグイン
- Dolby Atmos Music PannerをAbleton Liveで使用
- Rendererとの同期
- テンプレートプロジェクト
はじめに
このモジュールでは、基本的なAbleton Liveのセットアップとワークフローを説明します。どちらもAbleton Liveの練習でさらに詳しく学ぶことができます。
Ableton Live向けのドルビーアトモスワークフローでは、Dolby Audio Bridgeを使用してオーディオをDolby Atmos Rendererにルーティングします。Ableton Liveには、ネイティブのイマーシブパンナ―機能がないため、オブジェクトオーディオのメタデータはDolby Atmos Music PannerプラグインのVSTバージョンを使用して作成されます。Dolby Atmos Music Pannerは、Ableton Liveに依存することなく、Dolby Atmos Rendererとの接続を確立します。
Ableton Liveのトラックはすべてステレオトラックであるため、ドルビーアトモスミックスで使用されるオブジェクトはすべてステレオになります。個別のベッドチャンネルにオーディオをルーティングすることも可能ですが、Ableton Liveにはネイティブのサラウンドパンナ―が備わっていないため、このトレーニングでは、オールオブジェクトワークフローを使用します。
プロジェクト設定
- メニューバーから環境設定に移動します:「Live」>「Preferences」
- 「Audio」タブをクリックし、デバイスドライバーを「Core Audio」に、「Audio Output Device」を「Dolby Audio Bridge」に設定します。
- 「In/Out」サンプルレートを「48kHz」または「96kHz」に設定して、Dolby Atmos Rendererで設定されているサンプルレートと一致するようにします。
- 「Buffer Size」を「1024」サンプル(96kHzで動作している場合は2048)に設定します。
- 「Channel Configuration」で「 Output Config」をクリックし、どの出力を有効にするか設定します。
- 「Mono Outputs」と「Stereo Outputs」の両方の列で、各出力を個別に選択し、出力
1–130を有効にします。この設定はプロジェクト全体で維持されるため、この操作を行うのは1度だけで構いません。
Dolby Atmos Music Pannerプラグイン
Dolby Atmos Music Pannerプラグインがイマーシブオブジェクトオーディオデータを作成し、適切なレンダラー入力にメタデータを送信します。
Dolby Atmos Music Pannerプラグインの基本的な機能には以下を含みます。
- 上下のパンニングを可能にする高さ有効モード
- Freeform(フリーフォーム)、Wedge(ウェッジ)、Dome(ドーム)、Ceiling(シーリング)の4つの高さモード
- 「パック」またはノブのいずれかを使用して、X、Y、Z、およびサイズの座標や値を動的に設定する機能
- 以下のような、さまざまなリンクモードを提供:
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- Mirror X – Xのみをミラーリング
- Mirror Y – Yのみをミラーリング
- Mirror XY – XYをミラーリング
- Copy – あるチャンネルでの操作を別のチャンネルにコピー
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Pannerでは16ステップのシーケンサーも用意されています。
シーケンサーの用途
シーケンサーはシーケンサートグルを使用して作動させます。
シーケンスが有効になると、シーケンサーがオフであったときに作成された既存のX、Y、Z設定は無視され、オブジェクトサイズは維持されます。
シーケンサーはセッションのテンポに固定され、ステップの継続時間はドロップダウンメニューから決めます。オプションは 1/16、1/8、1/4、1/2、1、2、4、8、16、32です。定義された各シーケンスパスはこの間隔で完了します。
シーケンサーの各ステップで動的なオブジェクトパンニングパスを作成・編集します。
シーケンスステップやパスを作成・編集するには:
- ラジオボタンでシーケンサーを有効にすると、ステップ1に白い輪郭が表示されます。
- 「Edit」をクリックしてステップ1のパスを作成します。輪郭が赤色に変わります。
- 4つの描画ツールの内のいずれかを選択し、動的なオブジェクトパスを作成します。
- 描画ツールにはFreeHand(フリーハンド)、Line(線)、Ellipse(楕円)、Rectangle(長方形)があります。
- また、任意でパストリップの方向オプションを使用できます。
- ラウンドトリップパスでは、1ステップ内で描画パスに沿って動き、逆方向に戻るオブジェクトが表示されます。
- リバースボタンパスでは、パスが描かれた方向と逆方向に移動するオブジェクトが表示されます。
- パスを描くと、シーケンサーが次のステップへ進み、ステップに白い輪郭が表示されます。この輪郭は編集可能なコンテンツが含まれていることを示します。作成中となる次のステップは赤色に変わります。また、他のステップをクリックすることもできます。ステップを順序通りに描写する必要はありませんが、再生は順序通りに行われます。
- ステップをスキップまたは無効化したい場合は、赤い輪郭が表示されているときにステップをクリックします。青からグレーに変わり、再生でスキップされることを示します。
- 希望するステップをすべて書き込んだら、「Done」をクリックします。
- 以前作成したステップを編集するには、「Edit」をクリックし、必要に応じて変更を行って、変更が完了したら「Done」をクリックします。
- 「Reset」ボタンを押すとシーケンサーのデータがすべてクリアされます。このボタンは「Edit」モードでもクリックできます。
バーチャルルームに表示される描画パスの色は、以下のステータスを示します。
- 青:オブジェクトパスは有効であり、現在編集不可能なステップ番号ブロックに属しています。
- 白:オブジェクトパスは現在編集可能なステップ番号ブロックに属しています。オブジェクトパスは有効にすることも無効にすることもできます。
- グレー:オブジェクトパスは無効なステップ番号ブロックに属しているため無効になっています。
- また、ブロックは現在編集できません。
Dolby Atmos Music PannerをAbleton Liveで使用する
- メニューバーからプラグインの環境設定に移動します:「Live」>「Preferences」>「Plug-ins」
- 「Use VST3 Plug-In System Folders(VST3プラグインのシステムフォルダを使用する)」がオンになっていることを確認します:
- セッションまたは調整ビューで任意のオーディオトラックを選択し、インサートにDolby Atmos Music Pannerをロードします。
- Dolby Atmos Music Pannerプラグインは、ブラウザのサイドバーから「Plug-Ins」>「VST3」>「Dolby Laboratories」の順に移動すると見つかります。
- Rendererフィールドに「localhost」と入力することでMusic PannerとRendererの接続を確立します。
- 接続ステータスを表すインジケーターが緑色になっているはずです。
- Dolby Atmos Music Pannerのオブジェクト選択ドロップダウンメニューを使用してパンナーをオブジェクト11と12に割り当てます。
- トラック上で「Audio To」セレクタを「Ext. Out」に割り当て、出力チャンネルを11/12に設定します。
- 複数のオブジェクトをさまざまなトラック上で作成するには、Music Pannerの各インスタンスのオブジェクトと出力の割り当てが一致するように気を付けながら(例:オブジェクト13と14を割り当て、トラックの外部出力を出力13と14に設定)上記のステップを繰り返します。
Rendererとの同期
ドルビーアトモスのマスターファイルを録音するには、RendererとLiveを同期する必要があります。これを設定するための最も簡単な方法は生成されたLTC PCM .wavファイルをDolby Audio Bridgeの出力129または130にルーティングされたオーディオトラックに配置することです。
LTC .wavファイルを生成する方法はいくつかありますが、一般的なソースは http://elteesee.pehrhovey.net/ です。生成されたLTC .wavファイルがLiveセットのサンプルレートと一致することをご確認ください。LTCフォルダの練習コンテンツには48kHz 24fpsのLTCオーディオが用意されています。
- LTC .wavファイルが生成されたら、調整(水平タイムライン)ビューに移動します。「Create」>「Insert Audio Track」の順に移動するか、「Command + T」を押してオーディオトラックを新規作成します。このトラックを「LTC 129」という名前に変更し、入力を「No Input」に、出力タイプを「Ext. Out」に、出力チャンネルを「129」に設定します。
- 生成されたLTC .wavファイルをドラッグしてタイムラインの開始点にドロップします。
- クリップをダブルクリックしてクリップビューを開き、オーディオがワープしていないことを確認します。
- Rendererで「Preferences」に移動し、「Driver」をクリックして、「External sync source」が「LTC over audio」に、「LTC input channel」が「129」に設定されていることを確認します。
- 同期ボタンをオンに切り替え、Liveで「Play」を押し、Rendererがタイムコードをチェイスしていることを確認します。
- Rendererが録音にドロップする必要があるプリロールを提供するには、他のトラックのコンテンツをセッションの後方(テンポによりますが通常はバー3または5以降)に移動する必要があります。
- 「Time Ruler Format」をRendererで使用されているものと同じフレームレートに設定します(多くの場合24 fps)。
- 「Options」」>「Time Ruler Format」の順に移動します。
- カーソルをLiveセットのオーディオの開始点と終了点に合わせ、Rendererで使用するイン/アウトポイントを決めます。正確な値を決めるのは難しいかもしれませんので、インポイントの前とアウトポイントの後で最も近い整数値を使用してください。
(インポイントで00:00:05:01)
(アウトポイントで00:01:29:17)
- Rendererで録音のイン/アウトポイントを設定します。
- LTCタイムコードに基づいて必要なオフセットをメモします。練習コンテンツとして提供されているLTCファイルは01:00:00:00から始まりますので、タイムコード値は1時間のオフセットとなります。
- 録音されたマスターの過剰なプリロールまたはポストロールは、録音の完了後、RendererからのADM BWFのエクスポートでトリミングできます。
テンプレートプロジェクト
Ableton Liveテンプレートは現在、Dolby Atmos Music Pannerに付属しており、ベッドやオブジェクト用の出力が含まれています。Dolby Atmos Musicコンテンツを作成するには、練習コンテンツフォルダにあるテンプレートを使用してください。
テンプレートプロジェクトには、出力11~64にルーティングされた27のステレオオブジェクトトラック(各トラックにDolby Atmos Music Pannerプラグインをインサート)、および出力129にルーティングされたLTC用のオーディオトラックが含まれています。
テンプレートは、ドルビーアトモスとAbleton Liveの機能を試す上で最適な場所であり、練習でご利用いただくこともできます。