この記事で取り上げるトピック:
- リレンダリング画面
- リレンダリングのレイアウト
- リレンダリングの処理
- リレンダリングマトリックス
- リレンダリングの幅とタイプ
- ライブとオフラインの比較
- リレンダリングの出力へのマッピング
- ライブリレンダリングで使用できる物理出力の設定
- リレンダリングのプロパティの追加および変更
- リレンダリングのエクスポート
はじめに
リレンダリングにより、Rendererの音源選択からチャンネルベースの出力が生成されます。音源は、Rendererへのリアルタイム入力か開いたマスターファイルのいずれかです。リレンダリングは主に、ドルビーアトモス以外の配信向けのステレオ提供物の抽出に使用します。リレンダリングは、アトモスファースト戦略を実行するためのもので、別のステレオミックスを使用せずにプロジェクトをドルビーアトモスでミックスすることができます。 リレンダリングはフルミックス、ベッド、オブジェクト、あるいはRendererの入力設定で定義したカスタムグループから作成できます。ステレオステムを配信することで、必要に応じてダウンストリームのマスタリングを非常に柔軟に行えます。どのようなステムが必要かについては、対象サービスの配信仕様を確認してください。
「Re-render」画面
リレンダリングを作成、定義、マッピングするには、Windowsメニューから、またはCommand+R(Mac)またはControl+R(Windows)を使用して「Re-render」画面を表示します。
「Re-render」画面は、リレンダリングを幅と入力で定義したマトリックスで、物理出力にマッピングすることもできます。物理出力にマッピングしないリレンダリングを定義すると、これはオフラインリレンダリングでのみ使用できるようになります。「Re-render」画面のデフォルト設定では、7.1、5.1、ステレオフルミックスリレンダリングが物理出力にマッピングされています。これは変更したり、すべてクリアしたりできます。
リレンダリングのレイアウト
レイアウトは、2.0、5.0、5.1、5.1.4、7.0、7.0.2、7.1、7.1.2、7.1.4、9.1.6、BIN(バイノーラル)、AmbiX(B-フォーマット)、Loudnessから選択できます。
リレンダリング方法:
- 2.0から5.1.4までのレイアウトは、ユーザーが調整できるダウンミックスとトリム設定を使用してレンダリングされます。詳しくは、以降の記事で説明します。
- ビデオゲームのカットシーンやトレーラーに没入型コンテンツを簡単に追加できる、7.1.4が追加されました。
- 9.1.6、BIN、AmbiXを除くすべてのリレンダリングは空間コーディングを適用してレンダリングされます。
- BINはバイノーラルヘッドフォンモニタリングと同じBinaural Rendererを使用します。
- AmbiXリレンダリングはB-フォーマット4チャンネル(W、Y、Z、X)です。
ラウドネスのエクスポートはソフトリミットをかけた5.1リレンダリングです。そのため、Rendererやサードパーティ製のツールを使用したラウドネス分析に対応しています。リミットをかけていない5.1配信が必要な場合、標準の5.1リレンダリングを使用してください。
リレンダリングの処理
リレンダリングをリアルタイム出力で行えるようにするには、「システム環境設定」(Mac)または「設定」(Windows)の「Re-renders」タブでリレンダリングの処理を有効にする必要があります。
リレンダリングの量や複雑さによっては、CPU負荷に悪影響を及ぼす可能性があります。CPU負荷はRendererのメイン画面のCPUメーターに反映されます。ベストプラクティスは、マスタリング時はライブリレンダリング処理を無効にするか、必要なライブリレンダリングのみを出力にマッピングすることです。
ライブとオフラインの比較
ライブリレンダリングは、外部ワークステーション上でRendererを使用する際に、チャンネルベースの出力をDAWに再録音するために使用できます。「ライブ」という言葉は、リレンダリングが物理出力に割り当てられ、リアルタイムリレンダリング処理が「システム環境設定」または「設定」で有効になっている状態を指します。リレンダリング処理が有効になっておらず、リレンダリングが物理出力に割り当てられている場合、警告ステータスメッセージがリレンダリング画面の上部に表示されます。
Rendererの音源をDAWから入力に設定すると、出力にマッピングされているライブリレンダリングのみが使用できます。Rendererの音源が開いているマスターファイルの場合、ライブリレンダリングとオフラインリレンダリングの両方を使用できます。ライブリレンダリングとオフラインリレンダリングをミックスすることも可能です。ライブリレンダリングはすべて、マスターファイルが開いている状態ではオフラインエクスポートにも使用されます。
ライブリレンダリングでは、入力またはマスターのいずれかのRenderer音源を使用してDAWに再録音することができます。Rendererのスループット遅延によって、DAWへの再録音時にライブリレンダリングに遅延が発生することに注意してください。ベストプラクティスは、マスタリング時およびライブリレンダリング時に2ポップを含め、DAWに再録音されたライブリレンダリングを正確にスポットできるようにすることです。
5.1リレンダリングをDAWに再録音してサードパーティ製のラウドネス測定プラグインまたはアプリケーションを使用する場合、Rendererとエンコーディングツールで使用されたソフトクリップエンコーディングリミッターを含む専用のラウドネス5.1リレンダリングレイアウトを使用してください。これは、リレンダリング時にサードパーティ製のツールで測定したラウドネス値と、Rendererで取得した測定値を一致させるために必要です。
Dolby Audio Bridgeを使用している場合、ライブリレンダリングは使用できません。Dolby Audio Bridgeは一方通行のオーディオパスのためです。Dolby Audio BridgeがRendererへのオーディオ入力デバイスに設定されている場合、リレンダリング処理を無効にしてください。Renderer入力デバイスとして設定されているDolby Audio Bridge経由でリレンダリングを出力しようとすると、フィードバックループが生じる可能性があります。レイアウトのオーディオ出力デバイスとして、かつDAWへの入力としてDolby Audio Bridgeを設定している場合、開いているマスターファイルからDAWへライブリレンダリングを録音できます。
オフラインリレンダリングは物理出力にマッピングされません。
リレンダリングの出力へのマッピング
ライブリレンダリングは、「Map to Live」リレンダリングセクションで出力にマッピングします。リレンダリングをマッピングするには:
- 使用できる出力をクリックして、これをリレンダリング出力の最初のチャンネル(L)に指定します。
- マッピングすると、出力が青くなり、左側に表示される矢印から選択内容が展開されて出力チャンネルが表示されます。
- マッピングした出力を再度クリックすると、マッピングがキャンセルされ、リレンダリングを他の出力にマッピングできます。
他のリレンダリングとマッピングが重なっていると、確認する警告が表示されます。
リアルタイムレンダリングの場合、最大10のリレンダリングを作成して64個までのチャンネルにマッピングできます。
ライブリレンダリングで使用できる物理出力の設定
リアルタイムレンダリングで使用できる最初の出力は、「Room Setup」画面の「routing」タブで設定します。
- 「routing」タブは、RendererオーディオドライバーにSend/Returnプラグインを使用している場合は表示されません。
ライブリレンダリングは、Dolby Audio Bridgeを使用している時は適用されません。
デフォルトでは、ライブリレンダリングの最初の出力は23で、これはスピーカーの最大構成(22スピーカー)の次の出力です。7.1.4スピーカー構成を使用している場合、このリレンダリング用に割り当てられる最初の出力は出力13になります。一方、より大きなスピーカー構成(Dolby Atmos Mastering Suiteを使用した)のスピーカーアレイが有効になっている場合、競合警告が表示され、最初のリレンダリング出力を適切にシフトする必要があります。
リレンダリングを追加または変更するには
目的のリレンダリングのレイアウトを選択し、「Add」をクリックして新しいリレンダリングを作成します。レイアウトは、2.0、5.0、5.1、5.1.4、7.0、7.0.2、7.1、7.1.2、7.1.4、9.1.6、Bin(バイノーラル)、AmbiX(B-フォーマット)、Loudnessから選択できます。ドロップダウンメニューをスクロールすると、すべての選択肢を確認できます。
追加すると、リレンダリングが一般名で表示されます。デフォルトでこれがフルミックスのリレンダリングになります。
「Properties」をクリックすると、次の操作ができます。
- リレンダリング名を変更できます。
- レイアウトを変更できます。
- カスタムグループをリレンダリングに割り当てます。
プロパティで、既存のリレンダリングを変更できますが、リレンダリングが物理出力にマッピングされている場合、作成後にレイアウトを変更すると出力マッピングの競合が生まれる可能性があります。
「Custom」を選択すると、「Input Configuration」画面で定義し、割り当てたグループを使用できます。選択したグループに割り当てた入力のみがリレンダリングに含められます。これは、チャンネルベースのステム配信を作成するベストプラクティスです。ADM BWF .wavまたはIMF IAB .mxfマスターファイルが開いている場合、マスターファイルの作成時に使用可能だったグループのみを使用できます。グループメンバーシップを変更する必要がある場合、Dolby Atmos Conversion Toolを使用して.atmosパッケージに戻し、ファイルのロックを解除してRendererで編集できるようにしてください。
カスタムグループの選択が許可されると、リレンダリングマトリックスに表示されます。
リレンダリングのエクスポート
すべてのリレンダリングは、ライブかオフラインかにかかわらず、開いているマスターファイルを音源として、オフラインエクスポートができます。
リレンダリングをエクスポートするには:
- 「Re-render」画面で変更を許可します。
File > Export Audio > Re-rendersを選択するか、Command+E(Mac)またはCtrl+R(Windows)を押して「Export Re-Renders」ダイアログを表示します。
- リレンダリングのエクスポート先ディレクトリを選択します。
- リレンダリングのファイル名の基本名を入力します。この名前は、デフォルト名または「Re-render」画面で入力したカスタム名よりも優先されます。
- エクスポートするリレンダリングを選択します。デフォルトでは、「Re-render」画面で作成されたすべてのリレンダリングが選択されます。
- ファイルをインターリーブ.wavファイルでエクスポートするのか、複数のモノラル.wavファイルで出力するのかを選択します。
- インターリーブリレンダリングレイアウト5.0以降(Pro Toolsに対応するためインターリーブされる7.0.2および7.1.2を除く)のチャンネル順はSMPTEチャンネル順です。
- AmbiX以外のすべてのリレンダリングレイアウトは、モノラル.wavファイルとして出力できます。
- マルチモノファイルはリレンダリング名のついた新規フォルダにエクスポートされますが、インターリーブファイルは指定されたディレクトリの最上位レベルにエクスポートされます。
- チャンネル番号を、個々のファイル名の最後に追加することもできます(SMPTEチャンネル順が使用されます)。これは、ファイルをNLEにインポートする場合に便利です。
マスターファイル全体をエクスポートする場合選択します。手動でインとアウトのポイントを設定しておくと、ビデオファイルの長さに合わせてリーダーや2ポップ、その他のプレ/ポストロールを削除するのに便利です。
リレンダリングの配信
配信仕様でチャンネルベースの配信がトゥルーピークリミットを守るよう求められている場合、DAWのリレンダリングの録音したライブリレンダリングまたはインポートされたオフラインリレンダリングのいずれかで、ダイナミクス処理を適用する必要があります。