この記事で取り上げるトピック:
- 7.0.2/7.1.2バスおよびオブジェクトでのパンナーの使用
- パンナー高さモード
- ゾーン選択
- スピーカーの固定
- 自動高さ上書き
7.0.2、7.1.2、およびオブジェクトパンナー
モノまたはステレオトラックを7.0.2または7.1.2出力バスやオブジェクト出力パスに割り当てた場合、Pro Toolsで7.0.2、7.1.2、またはオブジェクトパンナーが使用されます。
7.1.2バスに割り当てられたモノトラックの「Output」画面(左)とオブジェクトの「Output」画面(右)
パンコントロールとインジケーター
Pro Toolsの「Output」画面の以下の要素は、7.0.2、7.1.2、オブジェクトパンナーに固有のものです。いくつかの例外を除いて、各「Output」画面に同じコントロールがあります。
- オブジェクトパンナーのパンナー画面の右上には「Object Output Path」セレクターと「Object Control Mode」ボタンがあります。これらのコントロールは、「Edit」および「Mix」画面の「Object」ビューで使用できるコントロールが表示されます。
- 7.0.2パンナーにはLFEフェーダーがありません。
シアターモード
7.0.2、7.1.2、オブジェクトパンナーを使用すると、Pro Toolsの「Panning Mode」セレクターで「Theater」オプションを使用できるようになります。このモードを選択すると、パンナーに3D/シアタービューが表示されます。
「Panning Mode」セレクターで、シアターモードを有効にできます。
シアターモードでは、3Dルームビューを表示できます。このビューは、パンナーディスプレイ内で回転させることができます。
シアターモードでルームビューを回転させるには:
- カーソルをルームビューの上に置き、スクロールホイールを使用するとルームが上下に回転します。トップダウン表示にするには、下までスクロールします。
3D/シアターモードでのパラメータ表示
シアターモードを有効にすると、オブジェクトパンナーに高さ、近さ、位置、画面位置すべてが表示されます。
シアターモードでの高さ、近さ、位置、画面のグラフィック表示
パンナーの表示要素は、信号を三次元空間で視覚的に表示します。
高さ — 高さ平面は、パンナーの「Height」値で指定した垂直方向の高度を示します。
近さ — パンドットのサイズは、現在のビューに対する近さを示します。パンドットは、最も遠くにパンした時に最も小さくなり、最も近くにパンしたときに最も大きくなります。
位置 — 高さ平面上に表示されるパンラインで、左右・前後の位置を示します。
画面 — すべてのビューでルームの正面から見た場合の視覚的な参考となる画面イメージです。
高さモード
パンナーのこの一連のコントロールで、トラックの高さモードを設定します。選択肢は左から右に、フリーフォーム、ウェッジ、スフィア、シーリングのモードです。
オブジェクトパンナーの高さモードと高さ有効コントロール
フリーフォームモードでは高さを手入力で調整できます。その他のモードでは、信号が前後または左右にパンされると、その形状に沿って自動的に高さを調整します。高さモードを変更すると自動化されます。
高さモードを選択するには:
- 高さモードのアイコンをクリックすると、そのモードが有効になります。有効なモードのアイコンが明るい緑色でハイライトされます。
高さパラメータのオン/オフを切り替えるには:
- 高さ有効アイコンをクリックします。ハイライトされると高さが有効になります(高さがフリーフォームモードになっている必要があります)。
高さ有効機能が自動化されます。
高さノブ
高さノブは、高さ機能を有効にしている状態でフリーフォームモードを使用する際に使用できるようになります。これにより高さパラメータが自動化されます。
標準の2Dビューでの高さ調整では、パングリッドの右に垂直なバーが表示され、トラックの相対高さが示されます。また、高さの値が大きくなるとパンドットのサイズが大きくなります。
シアターモードでは緑色の高さ平面が現在の高さ値になります。パンドットのサイズが近さを示しています。
ゾーンセレクター
ゾーンセレクターで、アクティブなスピーカーゾーン(ゾーンマスク)を設定します。これにより、信号をルーム中にパンする際にスピーカー出力が含められます。選択肢はすべてのスピーカー、フロント/サイドスピーカー(F/S)、フロント/リアスピーカー(F/R)、フロントセンター/リアスピーカー(FC/R)、フロンとスピーカーのみ、リアスピーカーのみ(サイドスピーカー含む)です。
パンナーグリッドを囲むスピーカーアイコンは、現在のゾーンに応じて表示されます。ゾーンマスクパラメータを自動化すると、現在のスピーカーのゾーンへの変更を自動化できます。
ゾーンセレクター
ゾーンを変更するには、以下のいずれかを行います。
- ゾーンセレクターを右クリックして、メニューから目的のゾーンを選択します。 ゾーンセレクターをクリックしたままにしてポップアップ画面を表示し、メニューから目的のゾーンを選択します。
- ゾーンセレクターをクリックすると、使用できるゾーン内で次々に切り替わります。
「Size」ノブ
「Size」ノブを使用して、要素のサイズを変更できます。「Size」を「0/off」よりも大きい値にすると、透明なグリッド(3D/シアターモードの場合は立方体)がパンドットの周りに表示され、「Divergence」コントロールが無効(グレーアウト)になります。
パンドットの周りのグリッド/立方体は、「Size」の値を大きくすると大きく、「Size」の値を小さくすると小さくなります。「Size」の値は自動にすることもできます。
2Dビューの「Size」ノブ(左)と「Size」グリッド表示(右)
要素サイズを変更するには:
- 「Size」ノブはクリックしてドラッグするか、Shiftを押したままスクロールホイールを使って調整できます。
スピーカーの固定
パンナーのスピーカーの固定オプションで、オブジェクトに割り当てられているトラックの「ドルビーアトモスのスピーカーの固定」のオンとオフを切り替えることができます。このオプションでは、複数のスピーカーを組み合わせて「ファントム音源」を作成しなくてもRendererの個々のスピーカー間でオブジェクトをパンすることができます。スピーカーの固定を有効にすると、Rendererはパン座標に最も近いスピーカーを選び、これを使用してサウンドオブジェクトを再現します。
これは、使用例によって望ましい場合とそうでない場合があります。ポイントソースサウンドが必要な場合、これは非常に便利なコントロールです。一方例えば9.1.6ルーム構成で左右ワイドスピーカーを使用している場合は、LW/RWスピーカー位置にオブジェクトをパンしてスピーカー固定を有効にすると、ワイドスピーカーが存在しない7.1.4または5.1.4構成でレンダリングした際に、L/R画面チャンネルの方向に固定されるか、Lss/Rssに戻ってしまう可能性があります。目的の結果を得られるよう、さまざまなスピーカーレイアウトを用いてスピーカーの固定を試してみることをお勧めします。
スピーカーの固定設定は自動にできます。
スピーカーの固定アイコン(有効の状態)
スピーカーの固定を有効(または無効)にするには:
- スピーカーの固定アイコンをクリックしてオン/オフを切り替えます。
ステレオトラックのパンナー
ステレオトラックでパンナーを使用している場合、デフォルトでは2つのパンナーがリンクされ、ペアがミラーリングされるようインバースパンが有効になっています。フロント/リアインバースを有効にすると、より柔軟に対応できます。
ステレオトラックのパンナーによるリンクとイメージコントロール
オブジェクト/バス割り当てと自動モードの表示
トラックの出力画面のパンドットと、I/Oビューのグラフィックパンナー(編集画面およびミックス画面)の色で、トラックのステータスが分かります。各色で、トラックがバスモードにあるかオブジェクトモードにあるか(バス/オブジェクトトグルにによる)、トラックオートメーションモードが読み取りモード、書き込みモード、オフのいずれなのかを示します。
パンドットの色表示:
Green | バス | 読み取り | ![]() |
Orange | オブジェクト | 読み取り | ![]() |
red | 任意 | 書き込み | ![]() |
黄 | 任意 | オフ | ![]() |
グレー | オブジェクト | オフ/バイパス | ![]() |
オブジェクトのバイパスについて
バイパス機能を使用して、複数の音源トラックが同じオブジェクトに割り当てられており、かつそのうち1つだけがパンメタデータを送信してRendererのパンニングをコントロールするワークフローを作成できます。これは、使用可能なRendererへのオブジェクト出力パスよりも多くのトラックがあるセッションでは必須の機能です。
オブジェクトのバイパスを有効にするには、以下のいずれかを行います。
- オブジェクトビューの「Object Control Mode」ボタンをクリックして「Master Object Control」モードを「Bypass」に設定します。
- オブジェクトパンナーの「Object Control Mode」ボタンをクリックして「Master Object Control」モードを「Bypass」に設定します。
「Object Control Mode」ボタンは、バイパスモードが有効になっているときはグレーで表示されます。また、オブジェクトパンナーのパンナー表示領域もグレーで表示されます。
これは自動にできない設定です。複数のトラックが同じオブジェクトパスに割り当てられている場合、すべてのバイパスされているトラックの「Object Control Mode」ボタンが無効になり、トラックがマスターモードに設定されている場合は変更できません。すべてのトラックから音声がRendererに渡されますが、音源をどのトラックが提供しているかに関わらずパンニングメタデータを提供するにはマスタートラックのパンナーを使用する必要があります。
自動高さで高さオートメーションを上書きするオプション
Pro Toolsでは、既存のフロント、リア、フロント/リアのパンオートメーションを再利用して、ドルビーアトモス(7.0.2または7.1.2)にミックスする際にダイナミックな高さ変更を自動的に生成できます。このオプションを有効にすると、選択した自動高さモードで高さオートメーションが上書きされ、新しい高さ情報が自動的に生成されます。これにより、既存の5.1または7.1セッションを開いてドルビーアトモス(7.0.2または7.1.2パンニング)でリミックスする際に新しいオートメーションを最初から作成する必要がなくなります。
自動高さで高さオートメーションを上書きするオプションは、オブジェクト出力を割り当てる前にトラックに既にメイン出力が割り当てられている場合、デフォルトでオンになっています(ワークフローの再利用とみなされます)。このオプションは、Dolby Atmos Pannerプラグインからオートメーションを受け継いでいるときや、トラックにオブジェクト出力が割り当てられているがメイン出力が割り当てられていない場合にはデフォルトでオフになります。
自動生成された高さデータをオートメーションとして使用する場合は、Coalesce Pan Guide Automationコマンドを使用します。以降の「Coalesce Pan Guide Automation」を参照してください。
自動高さで高さオートメーションを上書きするを有効(または無効)にするには:
- 目的のトラックの出力画面を開きます。
- 以下のいずれかを行います。
- 「Height Mode」セレクターをダブルクリックします。
- 「Height Mode」セレクターを右クリックして「Auto-Height Overrides Height Automation」を選択(または選択解除)します。
「Height」モードを右クリックして「Auto-Height Overrides Height Automation」を選択します。
「自動高さで高さオートメーションを上書きする」オプションを使用している現在のPro Toolsセッションを、古いドルビーアトモス対応のPro Toolsシステム(Pro Tools HD 12.8または12.8.1)と交換する場合は、高さパンオートメーションが正しく再生されるよう、Coalesce Pan Guide Automationを最初に使用してください。
Coalesce Pan Guide Automation
「自動高さで高さオートメーションを上書きする」オプションを使用して高さ情報を自動的に生成すると、Coalesce Pan Guide Automationコマンドを使用したオートメーションとして高さデータを使用できます。使用されている高さオートメーションは、フロント、リア、フロント/リアパンオートメーションを現在の高さモードに基づいて補間して計算されます。
選択した自動高さモードを使用して自動的に高さオートメーションを生成するには:
- 高さオートメーションを生成するトラックを選択します。
- Edit > Automation > Coalesce Pan Guide Automationを選択します。