この記事で取り上げるトピック:
- プロジェクトの作成
- プロジェクト設定の構成
- オーディオシステム設定の構成
- オーディオ接続の設定
- Nuendo外部レンダラーとの通信の確立とポートマッピング
- Rendererの選択とベッドおよびオブジェクトの接続
- Nuendo Renderer for Dolby Atmosを使用するための設定
- プロジェクト画面でのトラックの追加とVSTマルチパンナーへのアクセス
- Nuendo外部レンダラーでのDolby Atmos Music Pannerの使用
- Nuendoと外部レンダラーとの同期設定
- ADM BWFマスターファイルのインポート
- ADM BWFマスターファイルのエクスポート
- ダウンミックスのエクスポート
はじめに
ドルビーアトモスのワークフローでは、Steinberg Nuendo v8、v10、またはv11を使用できます。
バージョン11の導入により、Nuendoに、ドルビーラボからライセンスされたネイティブのRenderer for Dolby Atmosが搭載されました。これにより、Dolby Atmos Rendererを使用せず、Nuendo単体でワークフローを実行できます。この機能には、モニター、プログラムレベルのメタデータオーサリング、ADM BWFエクスポートが含まれます。
Dolby Atmos Rendererは、バイノーラルのモニター、マスターファイルの品質管理、ステムベースのリレンダリング、ラウドネス測定、既存のマスターのパンチイン/パンチアウト、MP4エクスポートで必要です。NuendoネイティブのRenderer for Dolby Atmosは、7.1.4までのスピーカーレイアウト(対応可能な出力ハードウェア付き)に対応していますが、スピーカーアレイやオンボードEQ/ディレイには対応していません。
Nuendoテンプレートは、Mac Rendererインストーラーに付属しており、Dolby Audio Bridgeを使用してRendererを内部で実行するか、MADIまたはDante経由で外部で実行するようにNuendoを設定できます。
ドルビーアトモスのワークフローをバージョン11で設定する方法は、バージョン8や10とは大きく異なっています。ここで示すスクリーンショットは、バージョン11で使用されている新しいルーティングとUIのものです。
プロジェクトの作成
Steinbergハブから、付属のテンプレートを使ってプロジェクトを作成するか、空のプロジェクトを作成します。一度空のプロジェクトから始め、ゼロから設定してみると、ワークフローへの理解が深まります。
プロジェクト設定の構成
プロジェクトの開始、フレームレート、サンプルレート、ビット深度(これは常に24ビットである必要があります)を設定します。
オーディオシステム設定の構成
オーディオシステムは、目的のワークフローに応じて選択します。メニューバーからStudio>Studio Setupをクリックし、「Audio Systems」をクリックして、適切な出力デバイスを選択します。
専用のRMWで外部で動作するDolby Atmos Rendererを使用する場合は、MADIまたはDanteデバイスに設定する必要があります。
内部で動作するDolby Atmos Rendererを使用するには、Dolby Audio Bridgeに設定します。
ドルビーアトモスのネイティブのRendererを使用する場合、モニターに使用するASIOドライバーデバイスに設定します。これは、5.1.4チャンネル以上またはスピーカーレイアウトが可能な、最低10出力を備えたコアオーディオデバイスでなければなりません。
選択したデバイスは「Audio System」に表示されます。デバイスをクリックするとプロパティと設定が表示されます。Dolby Audio Bridgeの130入力(未使用)と出力が使用可能なポートとして表示されます。「Control Panel」をクリックしてバッファーサイズを1024サンプルに設定します。ドルビーアトモスでネイティブのRendererを使用している場合、デバイスのバッファーサイズは512サンプルにしてください。
外部デバイスを使用している場合、「Externally clock」に設定し、必要に応じて「Clock Source」を設定します。
オーディオ接続の設定
Nuendoで必要なオーディオ接続も同様に、使用しているワークフローによって異なります。
Nuendo外部のRendererを使用している場合、Nuendoと同じワークステーション上で内部実行するか、RMW上で外部実行するかに関わらず、音声用の全128出力とLTC用のパスを設定する必要があります。Nuendo外部で、RMWでRendererを実行している場合、代わりにLTCをSteinberg Nuendo SyncStationのような同期機器にすることもできます。
NuendoのUIは、外部Dolby Atmos Rendererのもので、同じワークステーション上で内部実行されているRendererとRMW上で外部実行されているRendererは区別されていません。
Nuendo外部のRendererを使用している場合、以下のようにオーディオ接続を設定します。
メニューバーから、Studio>Audio Connectionsを選択して必要な出力バスを追加します(以下は、Dolby Audio Bridgeを使用したオーディオ接続です)。
- 「Add Bus」をクリックして7.1.2 Bedという名前の7.1.2バスを1つ追加します。
- 7.1.2バスのサイドおよびリアサラウンドの出力の順番は手動で変更します(サイドサラウンドを5と6、リアサラウンドを7と8)。
- 「Add Bus」をクリックしてObjectという名前のモノバスを118追加します。
- 「Add Bus」をクリックして、LTC Genという名前のモノバスを1つ追加します。
- RendererのMacインストーラーに付属のテンプレートを使用してNuendoプロジェクトを作成すると、上記の設定が行われます。
NuendoネイティブのRenderer for Dolby Atmosを使用している場合、以下のように音声接続を設定します。
メニューバーから、Studio>Audio Connectionsを選択して必要な出力バスを追加します(以下は、Dolby Audio Bridgeを使用したオーディオ接続です)。
- 「Add Bus」をクリックして、Monitorという名前の7.1.4バスを1つ追加します(または、スタジオのスピーカーレイアウトに合わせた幅と名前のバスを使用します)
- 「Add Bus」をクリックして、7.1.2 Bedという名前の7.1.2バスを1つ追加します。プロジェクトの各ベッドで出力を作成する必要があります。ベッドのバスは出力デバイスに接続されません。
外部Rendererとの通信の確立とポートマッピング
Nuendo外部Rendererを使用するには:
- メニューバーから、Studio>External Dolby Atmos Renderer Setupに移動して「External Dolby Atmos Renderer Setup」画面を表示します。Nuendoと同じワークステーション上でRendererを実行している場合はlocalhostを、RMW上でRendererを実行している場合はIPアドレスを入力してRendererとの通信を確立します。接続が確立すると、Rendererの左側のインジケーターが緑に点灯します。
- デバイスポートをマッピングします。最初の10入力を超えるベッドポートをマッピングし、「Audio Connections」画面で行った接続のバス幅と同じにします。デフォルトのマッピングでは、最初の10ポートがRendererの入力1~10にマッピングされ、ベッドに設定されています。「Map All」をクリックして「OK」をクリックします。
Rendererの選択とベッドおよびオブジェクトの接続
通信の確立とポートマッピングが完了したら、次にRendererに接続します。
- メニューバーから、Project>ADM Authoring for Dolby Atmosに移動して「ADM Authoring for Dolby Atmos」画面を表示します。この画面には複数の機能があります。Nuendoが使用するRendererを選択し、ベッドとオブジェクトをマッピングします。この画面には、ネイティブのNuendo Renderer for Dolby Atmosを使用する場合にのみ使用する機能もいくつかあります。
- オーディオトラックが「Project」画面で既に用意されている場合は、これを「Authoring for Dolby Atmos」画面でロードして、マッピングしないままにしておきます。
- 「Renderer」ドロップダウンメニューから、「External Dolby Atmos Renderer」を選択します。
- 「Accept」をクリックします。これにより、「Audio Connections」画面が再表示され、閉じることができます。
- 「Auto Connect」をチェックします。オブジェクトバスとオブジェクトバス接続が自動接続されます。この設定は、手動接続を行う場合は後でチェックを解除することができます。
- ベッド出力バスを手動で割り当てます。これは、外部Dolby Atmos Rendererを使用する場合は必要ありませんが、ネイティブのRenderer for Dolby Atmosを使用する場合は必要です。
- レンダラーの選択の横にあるセットアップアイコンをクリックすると、「External Dolby Atmos Renderer Setup」画面が表示されます。
オーディオトラックがない状態でレンダラーを選択した場合、「Project」画面で(Shiftをクリックしながら)「Project」画面のすべてのオーディオトラックを選択し、「Function」ドロップダウンメニューの「Create Objects from Selected Tracks」を選択します。
NuendoでRenderer for Dolby Atmosを使用するための設定
NuendoでRenderer for Dolby Atmosを使用するには:
- 上記のようにスタジオセットアップとオーディオ接続を設定します。
- Studio>Mix Consoleに移動します。
- モニター出力を探します(右にスクロール)。
- 下図のように、「Spatial + Panner」カテゴリーにあるRenderer for Dolby Atmosを挿入します。
- 「Renderer for Dolby Atmos」画面が表示されます。
- メニューバーから、Project>ADM Authoring for Dolby Atmosに移動して「ADM Authoring for Dolby Atmos」画面を表示します。
- 「Renderer」ドロップダウンメニューから「Renderer for Dolby Atmos」を選択します。
- 「Auto Connect」を使用するか、手動でベッドとオブジェクトをバスに割り当てます。
- ベッドとオブジェクトはRenderer for Dolby Atmosにはマッピングされません。トランスポートの再生時、Renderer for Dolby Atmosはアクティブになり、音声はRenderer for Dolby Atmosで選択したダウンミックスを使用して、オーディオ接続のパスセットからモニターできます。
プロジェクト画面でのトラックの追加とVSTマルチパンナーへのアクセス
- メニューバーからProject > Add Track>Audioに移動するか、左上の+ アイコンをクリックします。「Configuration」で7.1.2を選択します。「Audio Outputs」を、「Audio Connections」画面で作成した7.1.2 Bedに割り当てます。トラックの名前を7.1.2 Bedに、または必要に応じて付けます。
- 必要に応じて、ステムベッドのオーディオトラックを追加します。Project>Add Track>Audioに移動し、+アイコンをクリックします。+ アイコンをクリックするか、既存のトラックをコントロールを押しながらクリックしてAdd Track>Audioを選択します。「Audio Outputs」を同じ7.1.2 Bedバスに、またはその他のオーディオ接続およびExternal Dolby Atmos Rendererの設定ポート名で定義したベッドバスに、必要に応じて割り当てます。
- Project>Add Trackに移動するか、+アイコンをクリックするか、既存のトラックをコントロールを押しながらクリックしてAdd Track>Audioを選択して、オブジェクトのオーディオトラックを追加します。出力は7.1.2 Bedまたは追加のステムベッドバスに割り当ててください。最大100トラックを一度に追加できます。
- Rendererを前述の手順で選択し、オブジェクトトラックとオブジェクトバスの接続を行うと、オブジェクトトラックにアクティブなセンドが表示され、VST Multipannerが起動します。
- これらは、トラックの「Inspector」画面またはチャンネル設定の編集から表示できます。
- オブジェクトトラックをクリックして、トラックの「Inspector」画面に表示します。
- センドは、「Sends」ペインを展開すると表示されます。
- VST Multipannerは、展開した「Fader」ペインのサラウンドパンナーをクリックすると起動します。
- 「Project」画面のトラックの「e」またはトラックの「Inspector」の任意の場所をクリックすると、「Edit Channel Settings」画面が表示され、センドとフェーダーが表示されます。
- VST Multipannerは、展開した「Fader」ペインのサラウンドパンナーをクリックすると起動します。
- 「Object Mode」を選択すると、Rendererの接続ステータスインジケーターが表示されます。緑は、Rendererへの有効な接続があり、有効なバスが選択されていることを示します。「Object Select Bus」ドロップダウンは、オブジェクトバスへのマッピングを示します。このフィールドは「ADM Authoring for Dolby Atmos」画面の「Object Bus」列と連動しています。「ADM Authoring for Dolby Atmos」画面で「Auto-Connect Object Busses」を選択した場合、このフィールドはグレーアウトします。そうでない場合、VST Multipannerまたは「ADM Authoring for Dolby Atmos」画面から選択できます。
- VST Multipannerを挿入プラグインとして使用する場合は、オブジェクトモードは使用できません。
外部レンダラーでのDolby Atmos Music Pannerの使用
Dolby Atmos Music Pannerプラグインを使用するには:
- Dolby Atmos Music Pannerを音声、楽器、サンプラートラックに挿入します。
- トラックの出力を目的のマッピングしたオブジェクト出力に割り当てます。
- Music PannerとRendererとの間の通信を、「Renderer」フィールドにlocalhostを入力する(Rendererを内部実行する場合)または外部レンダラーのIPアドレスを入力して確立します。
- 接続ステータスインジケーターが緑に点灯します。
- 「Object」選択ドロップダウンメニューを使用して、出力と同じオブジェクトを選択します。
- 複数のオブジェクトをさまざまなトラック上で作成するには、Music Pannerの各インスタンスのオブジェクトと出力の割り当てが一致するように気を付けながら(例:オブジェクト12を割り当て、出力12に設定)上記のステップを繰り返します。
Nuendoと外部レンダラーとの同期設定
Nuendoと外部 レンダラーとの間の同期を有効にするには:
- Studio > Audio Connections for LTCでモノバスを追加します。内部でRendererを実行する場合、出力129になります。外部レンダラーを使用する場合、これは出力128になります。
- プロジェクト画面で、LTCバスに割り当てたモノトラックを作成します。
- SMPTE Generatorプラグインを挿入し、「Link to Transport」に設定します。
ADM BWFマスターファイルのインポート
- メニューバーから、File > Import > ADMに移動します。
- 「Import Options」画面で、インポートするトラックを選択するか「Select All Tracks」をクリックします。
- 「Import all Media Files」をチェックします。
ADM BWFマスターファイルのエクスポート
- メニューバーからFile > Export > ADMに移動するか、Project>ADM Authoring for Dolby Atmosに移動して「ADM Authoring for Dolby Atmos」画面を表示します。
- Nuendo 11では、ADM BWFマスターファイルのオーサリングとエクスポートが可能です。「ADM Authoring for Dolby Atmos」画面で、プログラムレベルのメタデータをベッドおよびオブジェクトのマッピングと共に設定します。これらのフィールドは、Dolby Atmos Rendererの同じ機能にそのまま対応しています。
- メインの「ADM Authoring for Dolby Atmos」画面の「Name」列は、「Renderer Input Configuration」画面の入力説明に対応しています。名前は手入力することも、「Functions」ドロップダウンメニューから「Apply Source Track Name」を選択してソーストラック名を付けることもできます。
- オブジェクトのグループ割り当てとバイノーラルレンダリングモードの設定も表示されます。
- 「Settings」ドロップダウンに、プログラムレベルのメタデータをオーサリングするための3つの画面の選択肢が表示されます。
- Trim and Downmix Editorは、Dolby Atmos Rendererと同じです。
- Binaural Render Mode for Bedsは、メイン画面で設定したオブジェクトからバイノーラルレンダリングモードを分離したものです。
- Object Group Editorはベッドとオブジェクトに適用されます。
- 「Export」をクリックする前に、「Project」画面のルーラーでADM BWFとエクスポート範囲を設定する必要があります。
- 範囲を設定したら、「Export ADM File」をクリックします。
- エクスポートされたADM BWFは、品質管理、ラウドネス測定、リレンダリング、MP4エクスポートを行うためにDolby Atmos Rendererで開くことができます。プログラムレベルのメタデータで編集やパンチインが必要な場合、Dolby Atmos Conversion Toolを使って、ADM BWFを.atmosマスターファイルに変換してから、Rendererで開き、編集用にロック解除してください。
ダウンミックスのエクスポート
- NuendoでRenderer for Dolby Atmosを使用するよう設定されている場合は、Renderer for Dolby Atmosで設定されているダウンミックスをチャンネルベースの配信物としてエクスポートできます。
- まだ開いていない場合は、モニター出力で挿入をクリックしてRenderer for Dolby Atmosを起動します。
- ダウンミックス幅をドロップダウンから設定し、必要なトリムとダウンミックスコントロールを設定します。
- メニューバーから、File > Export > Export Audio Mixdownに移動して「Export Audio Mixdown」画面を表示します。
- Renderer for Dolby Atmosが挿入されている出力チャンネルを選択します。
- ファイル名とパスを指定します。
- ファイル形式、サンプルレート、ビット深度を指定します。一般にはWave、48kHz、24ビットです。
- 「Split Channels」としてエクスポートし、ドロップダウンメニューから命名規則を設定します。
- ダウンミックスは、ユーザー指定の統合ラウドネスレベル(ダイアログゲーティングあり/なし)やトゥルーピークレベルにノーマライズすることもできます。
- 「Project」画面でエクスポート範囲を設定します。
- 「Export Audio」をクリックします。
- エクスポートするファイル数はモニタリングバスに合わせられます。たとえば7.1.4バスでRenderer for Dolby Atmosの出力をモニターする場合、12個のファイルがエクスポートされます。ダウンミックスが5.1に設定されている場合、最後の6つのファイルに音声がなくなるため、破棄する必要があります。
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