配信コーデック
ドルビーアトモスのコンテンツを家庭に配信するコーデックは3種類あります。
ドルビーTrueHDは、チャンネルベースのオーディオと没入型オーディオの両方に対応した可逆コーデックです。ブルーレイディスクの配信にのみ使用されています。ドルビーアトモスのマスターをTrueHDにエンコードする際、ディスク制作者は12、14、または16エレメントの空間コーディングを選択できます。この選択は、16エレメントを使用した場合に生じるファイルサイズの増加と、ディスクに使用できる容量で決まります。オブジェクトオーディオレンダラー(OAR)は、空間コーディングされたエレメントから7.1プレゼンテーションをレンダリングするために使用され、ブルーレイディスク上の5.1およびステレオビットストリームのどちらも7.1からダウンミックスすることができます。
ドルビーアトモスを使用したドルビーデジタルプラス(ドルビーデジタルプラスJOC)は、地上波放送だけでなく、ストリーミング配信にも使用される高効率非可逆コーデックです。ドルビーデジタルプラスJOCは、チャンネルベースのオーディオと没入型オーディオのどちらにも使用することができます。空間コーディングで使用されるエレメントの数は、エンコードのビットレートで決まります。384kbpsのビットレートでは12エレメント、448kbps以上のビットレートでは16エレメントを使用します。
ドルビーデジタルプラスは、ドルビーアトモスの主要な配信コーデックです。詳しくご説明します。
OARは、空間コーディング処理の後、オーディオを5.1にレンダリングするか、まず7.1にレンダリングして、次に5.1にダウンミックスします。5.1ダウンミックスには、ドルビーアトモスのマスターのオーディオがすべて存在します。これは、ドルビーデジタルプラスJOCに、通常のチャンネルベースの5.1ドルビーデジタルプラスとの後方互換性があるようにするためです。ドルビーアトモスのコンテンツを含むビットストリームが、ドルビーアトモスに対応していない民生用再生デバイスに提示された場合、5.1をデコード処理します。
エレメントのオブジェクトオーディオメタデータ(OAMD)に加えて、ジョイントオブジェクトコーディング(JOC)と呼ばれる処理で作成された補助的なメタデータがあります。これは、空間コーディングされたエレメント間のデルタの計算に使用されます。
その処理は、以下の図のとおりです。
JOCとOAMDのメタデータは、拡張メタデータフォーマット(EMF)としてパッケージ化され、ドルビーデジタルプラス ビットストリームのオーディオブロック間の「こま飛ばし」に挿入されます。EMFは空間を占めるため、ドルビーアトモスに対応していない機器はEMFを無視します。これにより、ドルビーアトモスに対応した機器と対応していない機器の両方でビットストリームのデコードが可能となり、後方互換性が保たれます。
ドルビーアトモス対応の民生用再生デバイスがドルビーデジタルプラスJOCのビットストリームを受信すると、5.1がデコードされ、JOCデコーダーがエレメントを再現し、OARが各エレメントのOAMDを使ってオーディオをデバイスにレンダリングします。
Dolby AC-4 IMS(没入型ステレオ)は、次世代のオーディオコーデックです。Dolby AC-4 IMSは、ドルビーアトモスを極めて低いビットレートで伝送するために使用されます。Dolby AC-4 IMSは、ドルビーアトモスのマスタリングプロセスで作成されたバイノーラルメタデータを使用して、標準的なステレオ再生機器と互換性のあるビットストリームを作成し、ヘッドフォンやスピーカーによるモバイル機器での仮想化された没入型ドルビーアトモス体験を提供します。
AC-4 IMSのエンコード処理では、空間コーディングは使用されません。
AC-4 IMSの採用率が高まってくると、Dolby Atmos Rendererに含まれるバイノーラルレンダーを使って、ミキサーもヘッドフォンでモニターすることが重要になってきます。